時効による所有権移転登記の申請方法
概要
時効による所有権移転登記は、不動産を時効取得した後に行います。
登記権利者は占有開始日に遡って所有権を取得します(原始取得)。
時効取得と第三者との関係
取得時効は10年または20年で完成しますが、
時効取得後に取得前の所有者が不動産を第三者へ売却した場合には、
登記がなければ第三者に対して所有権を対抗できなくなります。
したがって、時効完成後すぐに登記をすることが望ましいといえます。
事例
以下の書式は、法務太郎が平成5年1月1日から隣野健太の土地を
隣野健太の所有であることを知りながら悪意をもって占有開始し、
20年後の平成25年1月1日に時効取得した場合を想定します。
申請書の書式
青字は占有を開始した日付を記載します。
登記申請書
登記の目的:所有権移転
原因:平成5年1月1日時効取得
権利者:中央区登記町1丁目1番1号 法務太郎 印
義務者:中央区登記町5丁目5番5号 隣野健太 印
平成25年1月10日申請 〇〇法務局
添付情報:
登記原因証明情報
登記識別情報
印鑑証明書
住所証明情報
課税価格:金10,00,000円
登録免許税:金200,000円
不動産の表示
不動産番号 〇〇〇〇〇
所在 杉並区登記町1丁目
地番 1番
地目 宅地
地積 123.45平方メートル
原因
原因に記載する日付は、原則として時効取得者が占有を開始した日を記載します。
民法では初日不算入の原則がありあるため、
学説では占有開始した日の翌日を原因日付としていますが、
初日が不法占有とならないよう実務では占有を開始した日を原因日付としています。
権利者
権利者(登記権利者)とは、時効取得者です。
記載するにあたっては、時効取得者の住所・氏名または名称を記載します。
この記載は、住民票(法人の場合は、登記事項証明書)と一致していなければなりません。
登記権利者の氏名の横(法人の場合は代表者の氏名の横)に印鑑を押印します。
認め印でも可能です。
義務者
義務者(登記義務者)とは、時効取得された不動産の元々の所有者です。
記載するにあたっては、登記義務者の住所・氏名または名称を記載します。
この記載は、登記記録と一致していなければなりません(住民票や登記事項証明書ではない)。
登記記録と一致していなければ、所有権移転登記の前提として、
登記義務者の住所・氏名または名称の変更登記を行わなければなりません。
登記義務者の氏名の横(法人の場合は代表者の氏名の横)に印鑑を押印します。
登記義務者の場合は必ず実印を使用してください。
添付書類
- 登記原因証明情報として、時効取得の事実があったことを証する書面を添付します。
⇒時効取得の事実があったことを証する登記原因証明情報の作成方法
- 登記済証又は登記識別情報は、登記義務者が不動産を購入した際に取得したものを添付します。
- 印鑑証明書は、登記義務者のものを添付します。
- 申請書に押印する印鑑証明書は、発行から3ヵ月以内のものに限る(本人申請の場合)。
- 時効取得者が個人の場合、住所証明情報として、住民票等を添付します。住民票は、お住まいの市区町村で発行可能です。
- 時効取得者が法人の場合、住所証明情報として、登記事項証明書を添付します。登記事項証明書は、全国の法務局で交付を受けられます。
課税価格・課税標準
⇒不動産の所有権移転登記における課税価格・登録免許税の計算方法
不動産の表示
不動産番号を記載した場合は,下記の記載を省略できます。
- 土地の場合・・・土地の所在、地番、地目及び地積の記載。
- 建物の場合・・・建物の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載。
実際には登記官が確認しやすいように全て記載することが望ましいので、
登記簿謄本を参考に記載して下さい。
提出先
不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
登記済証または登記識別情報を提供できない場合
登記済証または登記識別情報を紛失した場合でも登記申請は可能です。
司法書士・弁護士が代理申請する場合
申請情報
申請書には、申請人の押印の代わりに、以下の情報を添付情報の上に追加記載します。
代理人 中央区登記町2丁目2番2号 司法太郎 印 連絡先の電話番号03−〇〇〇〇−〇〇〇〇 添付情報: 代理権限証明情報
代理人が申請する場合、申請人による申請書への押印は不要です。
その代わり、委任状への押印が必要となります。
登記権利者は認印でも構いませんが、登記義務者は実印を使用して下さい。
また、登記義務者は発行から3ヶ月以内の印鑑証明書を添付して下さい。
添付情報
本人申請の場合に加えて、
代理権限証明情報として申請人となる権利者および義務者の委任状が必要です。
委任状は、作成後3ヵ月以内のものに限ります。
上記書式の場合は、法務太郎および隣野健太の委任状が必要となります。
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2013年8月3日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:所有権移転登記